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APRS
The Automatic Packet Reporting System

予算 20,000円以内でできるAPRS
クルマから位置情報を出してみよう編



クルマから今いる場所の位置情報をパケット通信を使って送信することで、近所の IGATE局がそれを拾って、自動的にAPRSサーバーに送ってくれます。IGATE局の周りにはWIDE1-1でエイリアスを設定しているデジピータ局が稼動していますので近所にIGATE局がなくても、これらのデジピータが移動体が送信したパケットをI-GATE局まで届けてくれます。

ハッキリ言って、
移動局側では、144.64MHzまたは144.66MHz等の周波数に設定して、ビーコンを出して走れば良いだけデス。現在は、9600bpsでの運用局も増えてきましたので、混雑緩和や利便性向上の観点からパケット通信のデータ伝送速度に応じて周波数を使い分けるようになってきました。

APRSで使用されている周波数(2010年5月現在)
144.64MHz 9600bpsパケット
144.66MHz 1200bpsパケット
144.68MHz テスト用途 (I-GATE局のNET->RFデータ吐出など)
431.**MHz 運用局は少ないが実験的に運用されているところもある
144.39MHz アメリカなど海外(日本では運用不可)

自分や各局の位置情報を見るには、インターネットのWEBサイト(http://aprs.fi)や自宅や他の場所で受信状態で待機させているAPRSソフトなど、様々な方法で見ることができます。車の中で「地図を」見るためにはモバイル回線でインターネットが見られるパソコンをクルマに装備すると便利です。もっとも、クルマを運転しながら他の局の動向を見る、なんて事は安全運転上を問題アリですオススメできません。
 なお、APRS対応機ではソレ単体で地図は見られませんが、相手局の自局からの方角や距離、移動スピードなどを見ることができ、無線機単体でメッセージングもできますので、予算があれば、これらの「APRS対応機」を用意すると良いでしょう。これらのトランシーバは移動体で運用できるように設計されているので好都合です。

■クルマの中から位置情報を送信する簡易なシステム構築(例) 超簡単

現在最も手軽なシステムとして日本でも流行の兆しがあるのが、以下の製品の組み合わせです。ハッキリいって位置情報を出すだけならこれだけでできます。小型なのでクルマからだけではなくハンディ機と組み合わせて徒歩や自転車モービルなどでも運用できると思います。

ただし、APRSはアマチュア局同士のコミュニケーション,すなわち双方向通信が目玉です。「移動体からでも様々な情報を得られる」、「双方向のコミュニケーションができる」ように設計されているシステムですので、簡易な設備でAPRSのしくみをある程度理解できたら、VX-8シリーズやTH-D72、FTM-350 TM-D710などのAPRS対応機などへのグレードアップをお勧めします。

【必要なもの】
(1)Tiny Trak3 plus  (APRS位置情報発信専用パケット通信モデム) $47
(2)Deluo GPS (アンテナ一体型GPSレシーバ/PS2コネクタのヤツ) $65
(3)Deluo GPSとTiny Trakをつなくケーブル (Deluo to Tiny Tral 3 Adapter) $5
(4)Tiny Trak と無線機&電源をつなぐケーブル(Radio Power Cable) $19
(5)2mのFM無線機 (古くても良いがデータ端子付きが便利)
合計予算 US$136 = 16,320円
(120円/$換算) です。
キットを入手して、ケーブル類を自作すればもっと安くあがります。 (1)〜(4)は日本では売られていませんので海外から通販で買わなければならないのですが、比較的安価です。このあたりの入手を容易にすべくグループで共同購入されたり色々と努力されているかたもいますので今後に期待しましょう!!
なお、Deluo GPSアンテナをパソコンに直接つないでゼンリンなどの地図ソフトを走らせるとパソコンがカーナビ代わりになりそうです。この場合、Deluo USB Adapter を使うと良いようです(実験予定)。
※TinyTrakのキットの写真→
(写真提供 7M1RUL)



実際に稼働させているAPRS移動局(JS1CYI-9)のシステム構成。
音声でのQSOは別の無線機を利用。
音声でのQSOはもっぱら 430MHz帯や1200MHz帯なので2mでのAPRS運用は好都合。

※無線局の免許の関係と運用周波数

付属装置としてパケット通信装置を無線機に取り付けた状態になりますので、TSSで保証認定を受ける必要があります(すでに許可を受けている無線機の場合は総務省直接申請でOK)。電波型式は(FMを利用した場合)F2Dです。無線機の取扱説明書にその申請方法が書いてある事が多いので参考にされてください。
 なお、これらパケット通信に利用する周波数は「広帯域デジタル」区分または「全電波形式・実験研究用」区分となります。「広帯域デジタル区分」で発射できる電波の型式は F1D,F2D,G1B,G1D に限られています。F2A(CW-ID) やF3E(音声ID)などは発射できません。詳しくはこちら

無線局の変更手続きの書類はこちらからダウンロードできます。

■Tiny Trak3 plus の配線と設定

無線機との配線
Tiny Trak3と無線機をつなぐためにケーブルは製造元でも別売りで用意されていますが、自作もできます。この場合、9ピンD-Subのオスコネクタを用意してください。無線機との接続はデータ端子を利用すると便利です。コネクタピンアサインは昔一世を風靡したカントロニクスのKPC-2やKPC-4(懐かしい!!)とコンパチだそうです。

注意) 無線機のデータ端子ってうまく動作しない場合はTinyTrakの基板上の「R8 2.2KΩ」をカット。ハンディ機のマイク端子につなぐ場合はR8をカットしないでOK。(詳しくは説明書を参照してください)

TinyTrak3Plus は、位置データを送信するための送信専用のTNC。この小さい筺体でAX25のAFSKを生成してるのですからたいしたもんです。購入したあとパソコンとつないでコールサインやデジなどを設定しなければなりません(デジルートの設定については後述)。

↓Tiny Trak 3 Plus (APRS用モデム)

右側のコネクタにGPSアンテナ(Deluo GPS)を変換ケーブルを介してつなぎ、左側のコネクタを電源と無線機のデータ端子に接続するだけの簡単構成。無線機はFT-857を利用した。

アンテナ一体型GPSレシーバー「Deluo GPS」。設置の際は下に鉄板をひくと良い。(上記の設置例ではパソコンの5インチベイをふさいでいた鉄板を流用)

TinyTrak3Plusの設定



設定は、RS232Cクロス(リバース)ケーブルでパソコンと本機の(GPS/Comupter端子)をつなぎメーカーのWEBサイトからダウンロードできる設定ソフト(TinyTrak3config.exe)で設定します。設定後はパソコンをつながず、DeluoGPSやガーミンなどのGPSレシーバーをつなぎます。

設定例

上の設定ウィンドウはFT-857と接続した場合の例。コールサインの部分を除いて上記の設定にしておけば全国各地で概ね良好に動作します。以下にぜひ知っておいていただきたい点を記します。

【コールサインとSSID】
2010年にSSIDの推奨値が変わりました.モービル機+TT3などのように、クルマで移動する局のコールはJS1CYI-12などのように SSID(ステーションID)を12番に設定するのがルール(上の画面キャプチャはちょっと古いので-9になっています-注意!!)。さらに、配線を追加すればPrimary,Secondaryと2つの設定内容をハード的に切り替えることも可能。

【Digi PATH】

WIDE1-1(←推奨)
APRS対応トランシーバなどでは「WIDE1-1,WIDE2-1」が初期値ですが、現在はWIDE1-1のみの記載が推奨されています.

【Alternete Digi PATH】
ここにチェックを入れておくと、Primary に入れたデジパスとSecondary に入れたデジパスとを位置情報の送信ごとに交互に切り替えて送信するようになります。

【Smart Beaconig】
SmartBeaconig機能をOnにすると、車の進行方向が変わった場合や、走行スピード、高度の差異、に応じて位置情報が送信されるようになるという優れもの。高速道路では頻繁に、一般道・街中では交差点を曲がった時にビーコンが出るように設定できます。スピードの単位は Miles Par Hour (MPH) で 1MPH≒1.6Km/h (1.609344) です。

【Symbol】
Symbol は他の局の画面上などで表示されるアイコンの絵柄。デフォルトでは乗用車。この例では v (= バン)に設定してある。この絵柄は世界共通で、かつ世界中のAPRS局に絵柄情報も配信されるので不適切な絵柄を選ばないようにするのがポイント。


この設備を使って実験し、移動軌跡をWEBサイトで見た様子・・・わざと丘や坂が多い川崎市北部地域を走ってみましたが恐ろしいほど完璧に位置を拾ってます。ちなみに走行速度も表示されています。


IGATE局の運用について

IGATE局がない地域では、いくら移動局側から無線を使って位置情報を出しても、空振りに終わります。現在はほとんどの地域にIGATE局がありますからあまり問題にならないかもしれません。

IGATE局を運用するには、無線機・パケット通信用のTNC・パソコン・インターネット回線があればOK。ソフトウェアはUI-VIEW32というソフトウェアを使用するのが一般的で、VoIP無線のノード局用ソフトウェアと同時稼動できる可能性も高いと思います。
 ただ、IGATE局がすでに運用されている地域では、無線回線(RF)側の混雑緩和と、インターネット(NET)側のサーバー負荷軽減の観点から慎重な運用が必要と言われ、RF側が混雑している地域では歓迎されません。




WiRESノード局 と共存したシステム構成例(同時に稼動できる)


(番外編) ハンディ機1台でAPRSを楽しむ例

現在日本で入手できる「APRS対応ハンディ機」にはバーテックス・スタンダード社の VX-8DとVX-8G、ケンウッド社のTH-D72がある。VX-8G、TH-D72はそのままで、VX-8DはオプションのGPSレシーバ(FGPS2)を接続すれば、即、APRSに対応する。これらのハンディ機を使えば、コンパクトかつ格好良くまとまるのが嬉しい。

筆者のモービル設備。VX-8Dをケータイ電話フォルダを使って取付。VX-8はAPRS専用として利用。他にFTM-350を積んでいる。目的地に着いた所でカンタンに脱着し持ち運べて便利。5W出力なのでモービルからビーコンを出す際は外部アンテナ利用が適。首都圏では5W+モービルアンテナで充分実用域.

TT3みたいな装置を自作してしまう例

位置情報発信モデム自作例
日本でも、自作モデムを自作する人が増えてきた。写真はFT-90内蔵位置情報パケット発信モデム試作品。


<余談>
APRSはVoIP無線のようにインターネットを利用した全世界規模のネットワークです。それゆえ、VoIP無線との相性も良好で、音声はVoIP無線、データ(位置情報や文字通信)はAPRSといったような運用スタイルも流行の兆しがみえてきました。その証拠に、APRSを楽しんでいるかたはかなりの割合でVoIP無線も楽しんでいます。
2011-03-05更新
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