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公衆用?無線LAN・Fonのアクセスポイントを作ってみました。

FONソシアルルータ。           ↑
これでプライベートな無線LAN環境と私設ホットスポットを実現


FONというシステムがある。2005年にスペインのベンチャー企業が考案したネットワークシステムらしい。たまたま秋葉原のツクモ電気でその製品を見かけたので衝動買いしてオフィスに設置してみた。

この製品のコンセプトは、各家庭やオフィスに設置してあるインターネット回線を無線LANを使って共有しあい特に複雑な装置や手続きなしで(いつものノートパソコンを外に持ち出すだけで)世界中どこに行ってもインターネットを使えるようにするということらしい。
 無線LANを使っていても、自分が設置したアクセスポイントだけしか使えず、しかも設置場所の近所でしか使えない・・・街中には無線LANの電波があふれているのに、それを何とか使えるようにできないものか、という発想に端を発したシステムである。

具体的には、「FONの無線LANアクセスポイント」を自宅やオフィスに設置してユーザー登録すれば、他の人が設置した「FONの無線LANアクセスポイント」を自由に「無料」で使えるというもの。もちろん、自分のアクセスポイントも他の人に使われる事もある。今のところは特に会費も必要ない。唯一の出費といえば、FONのアクセスポイント装置(FONソシアルルーター)を\2,000位で入手するだけだ。

外出先でFONの公衆アクセス機能を利用するニーズはなくとも、このソシアルルーターを無線LAN機能がないルーターにつなぐだけで、無線LAN機能が付加できる。実にオイシイ話だ。

FONのアクセスポイント装置といっても別に難しいものではなく、普通の無線LAN装置の機能にFONの公衆アクセス用機能を付加したもので、ソーシャル(サービス用)のSSIDとプライベート用SSIDを使い分けて利用するようになっている。ソーシャル用はセキュリティが厳しく(もちろんプライベート用のIPアドレスやアンノウンポートはシャットアウト)、プライベート用のものはセキュリティがしっかりかかっているうえフルアクセスが可能という仕様だ。


(図: 東京エリアのFONアクセスポイントの稼動マップ。結構ある)

・FONのリスク

そんなFONも危険な側面もある。それは、インターネットを利用したトラブル。掲示板への悪意を持った書き込みや詐欺メールなどインターネットの匿名性を利用した犯罪がないわけではない。
 ただ、FON側ではアクセスポイントを利用するには登録により発行されるIDとパスワードが必要で、その利用履歴も残るようになっている。さらに、このあたりのリスクを軽減するためには、ルーターのWEBフィルタ機能などを利用し不適切なサイトをシャットアウトするなどちょっとした工夫(自己防衛)を講じることで回避できる。

なお、案内サイトや検索マップが少々重かったり、変な日本語だったりする部分が散見されるが、マップ表示については FireFoxというWEBブラウザを利用すると速いのでお試してみると良い。

・アマチュア無線家からみたFONの魅力

面白いのはアクセスエリアを広げて遊べるということ。外部アンテナ端子がついているので、市販されている2.4GHzのGPやモービルホイップはもとより自作のアンテナをつなげて遊ぶこともできる。FONソシアルルーターを防水ボックスに入れて、屋外に設置してアクセス範囲を広げてみるのも面白い。(5GHzLANはそれができないが、2.4GHzLANならそれができるのだ) それが、単なる自己満足を得るだけでなく、他の人の役にも立てるのだからとても有意義といえよう。
 そして、仲間が家に遊びに来たときも無線LANのアクセス設定をいちいち教えることなく仲間がパソコンを使って遊ぶことができる。いわば私設ホットスポットが\2000で開設できてしまうということになる。

・D-StarのDDモードでもそれは可能

アマチュア無線でもTCP/IPを使って通信できるD-Star DDモードという規格があり、これも無線LAN的な利用が可能で、かなり距離が離れてもデータ伝送できる。具体的にこのモードでの伝送速度は 128Kbpsが最大である。無線LAN装置の最大空中線電力(=電波の強さ)が10ミリワットであるのに対し、アマチュア無線のそれは10W(10,000ミリワット)で、無線LANの1000倍の出力である。アンテナを指向性のあるものにすれば、数十キロの伝送距離を得られることだろう。

 しかし、その伝送内容はアマチュア無線に関するコンテンツに限ったほうが良いというような意見が台頭し、自分たちで自分の首を絞めてしまっているようだ。

総務省の内部資料(審査基準の解説)をちょっとだけ見せてもらったことがあるが、それを見るに、

・ストア&フォワードするデータをやりとりする場合、そのデータの作成者は無線従事者でなくても良い
・公衆網接続局(アクセスポイント運用局)の解釈については、公衆網接続局の運用者が他のアマチュア局がそのアクセスポイントを使って通信することに興味があればよい。

という判断基準だと思われる。これを見るに、電波法上はFONのアクセスポイントみたいなことがアマチュア無線の電波を使ってもできるということなのだが、その伝送速度の遅さと、決して安くない構築コスト(1台あたり約10万円かかる)、厳しい意見などに阻まれてか、あまり普及していない。

パイオニアの方々は、このFONのコンセプトも参考にしてみてはいかがだろうか。FONのコンセプトを真似てアマチュア無線を使ったホットスポットのようなものも実現できなくはないか?もちろん、セキュリティのかけかた、そのほか色々と研究課題は山積しているように思えるのだが。それを研究できるのがアマチュア無線の醍醐味ともいえる。インフラもほとんど構築されていないのにそのインフラで飛び交う内容の議論をしたり、他のシステムと比較して優位性を無理にPRする事に労力を使うことよりも、DDレピータでWEBを見てみようと啓蒙するほうが、はるかに有意義だと思う。もっとも、無線関係でありかつ非営利目的のサイトしか見てはイカンという事であれば、話は別だが。
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