TOPICS
APRS
Automatic Packet Reporting System

近年のGPS機器の普及と低価格化、電子地図の普及にともない、私達のまわりでも、ハンディGPSやら、カーナビも非常に身近なものとなってきました。

無線とGPSの融合は、警察の「カーロケ」や業務無線のMCアクセスeなどで 実用化されています。実はこのような無線とGPSを融合したシステムはアマチュア無線でも結構前から運用されてきました。
 今回は海外製なれど日本でもユーザーが増えつつある「APRS」に着目し、実際にシステムを構築して運用してみました。これは、インターネットを利用して世界規模のネットワークとして稼動しているもので、アマチュア局の位置だけではなく、各地に設置されたウェザーステーションで計測した気圧・気温・風向なども見られたり、地震情報や一部のアマチュア衛星の位置なども地図上にプロットされます。
 さらに、パソコン端末からの文字通信(CHAT)のほか、ケータイ電話のショートメールのようにハンディ機(※)やモービル機からショートメッセージの交換もできるなど多機能で応用範囲も幅広いシステムです。※メッセージの送受信ができるトランシーバで日本で市販されているのは現在のところ、ケンウッドTM-D710、RC-D710、スタンダードの FTM-350、VX-8シリーズがあります。

さて、 「ナビトラ」もあるのになんで今更APRSという声が聞こえてきそうですが、誰でも簡単にできそうなレベルまでハードもソフトも成熟してきたのがその理由。移動局側の設備も位置情報を送信するだけなら1万5千円位予算で構築できます(無線機は別)

欧米主導は悔しいけど、何といっても、欧米のアマチュアのパワーとアイデアとそれを構築する余裕とボランティア精神はすごい!です。とにかく位置情報を交換するだけではない非常に奥が深いと思われるネットワークです。

APRSはこんなときに便利です!!
■交信相手や仲間のアマチュア局に運用場所や移動運用場所を簡単に知らせたい
■昔のパケット通信でおこなっていたような無線を使ったメッセージング(UI−CHAT)を楽しみたい
■全国・世界各地の気象情報などを知りたい (ウェザーステーション情報)

APRSはこんなひとにオススメです!!
■その昔パケット通信にはまっていた。PBBSやUI-CHATで遊んでいた。
■他局にインフラを提供したり構築したりするのが好きだ (デジピータ・I-Gate運用)
■移動運用の際、移動運用の場所をみんなに知ってもらいたい。
「移動地からAPRSのビーコン出してます」と言えば。交信相手に移動地を確認してもらえます
メッセージ送受信対応トランシーバを利用しているとメッセージが届くこともあります。

APRSはインターネット上にあるAPRSサーバーに各局の位置情報(固定局・移動局)やデータを定期的に送信して、それらをアマチュア局側でインターネットや無線で受信して、各局の位置情報を地図上に表示させたりすることができます。移動局側からは従来からある"パケット通信"を利用して位置情報を送信すると、無線回線からはインターネットと無線局の間を取り持つ" IGATE "局(VoIP無線でいうノード局のようなもの)により、APRSサーバーに情報が転送されます。日本では無線回線に、144.64MHz/144.66MHz/431.02MHzが利用され、都市部を中心に複数のIGATE局やデジピータがその周波数で稼動しています。

■ 百聞は一見にしかず、とにかく様子を見てみよう!!

インターネットに接続しているパソコンからでしたら、今すぐにでも様子を見ることができます。

■ WEBサイトで見る場合(見るだけ)

WEBサイトで見る場合には http://aprs.fi がおすすめです。



■ ソフトウェアで見る場合(送りもできます)

WEBサイトだと「見るだけ」ですが、ソフトウェアを使うと必要に応じてデータを「送信」することができるようになります。APRS用のソフトウェアは複数あり、UIView32とAGWtrackerがメジャーです。手っ取り早く体験するなら AGWtracker というソフト(49US$のシェアウェアです)を使うと便利です。それをインストールしてインターネットにつなげば各局の状況を綺麗な地図上で見ることができ、アカウント(5桁番号)を取得しこのソフトウェアを設定する事よって自局の位置情報などをAPRS網に送信することやCHATにも参加できるようになります。

図↓AGWTrackerでAPRSサーバーにアクセスして各局の位置を表示させたところ

(地図の拡大縮小も自由自在)

超簡単!! AGWTracker のいれかた
ソフトウェアのダウンロードはこちら→ http://www.elcom.gr/sv2agw/

Windows Xpや2000をお使いであれば、 AGWTrackerU.msi をダウンロードします。
※バージョンアップする場合には旧バージョンをアンインストールしてからにします


たったこれだけ!! AGWTrackerの設定

(1)日本語モードにする
Tools -> Setup -> Language で Japanese を選択
(2)自局情報を入れる
ファイル->詳細設定->自局情報 を開いて必要事項を記入する(緯度経度も入れます) (図1)
※コメントも半角英数字で!!(かな漢字ダメ)
(3)APRSサーバーの指定
"アクション->サーバーに接続->japan.aprs2...(中略).... Japan Feed: T2JAPAN Saitama, Japan を選択 (図2)"
するのが定番となっています。常時接続のインターネット回線を使っている場合には「起動時に自動接続、自動再接続」にチェックしておくとFBです。5桁番号をお持ちの場合は、I have a login ... 云々にチェックをした後、コールサインと5桁番号を入力します。
(4)地図を開く
"ファイル->開く->Vertual Earth を開く"
はっきりいってこれだけで、上の図のような地図が表示され、各局のコールサインが地図上にどんどんプロットされます。1時間も放置しておけば、ほぼ全ての稼動局が表示されるはずです。
"ツール→現在の地図選択設定を保存"の操作をしておけば起動時にいつも同じ場所・倍率の地図が表示されます。
(5)図2の「5桁番号」について
APRSサーバー(ネットワーク)を使ってメッセージング(文字CHAT)をおこなう場合には、コールサインごとに発行される5桁番号をもらってAGWTrackerに入力することが必要となります。この5桁番号を得るには登録が必要です。日本のAGWTrackerユーザー向けの発行受付は JA6NKA局が担当されているそうです。登録申請ページはこちら なお、コールサインに応じて発行されるものでSSIDごとに番号を得る必要はありません。
 また、AGWTrackerの代金を払って登録キーを得たかたは、図2のウィンドウで局名を入れた直後TUBキーを押すと5桁番号が自動的に入力されます。(検証済)

図1

図2
※(2)のAPRSサーバーは適宜他のも選ぶことができます。できる限り日本のサーバーにつなぎましょう。

★AGWtrackerの5桁番号についての詳細はこちらにも記事があります。

■貴局の位置情報を発信してみよう!!
もし貴局の位置も表示させたい場合は以下の設定をおこないます。もちろん、他の局にも貴局の位置が表示されるようになります。必ず最新バージョンで動かしてください

(1) ファイル->詳細設定->Packet を開く
(2) このポートから送信可能にするにチェック

※ビーコン情報欄を記入する場合も必ず半角英数字で!!(かな漢字は絶対にダメ)

こうすることで、世界中の局あてにインターネットを通じて貴局の位置情報が定期的に送信されるようになり、それはインターネット内だけではなく一部のIGATE局から無線回線でも送信されます。見るだけなら、このチェックは外しておくか「ビーコン間隔」はかなり長めにとっておいたほうが無難です(固定局は最低でも20分以上の間隔が推奨されJQ1YDAでは 60分に設定しています)。
 まだ日本での運用局数が少ないとはいっても、事実上ひとつの周波数に集まっているため、密集地では移動局が位置情報を送信しようとしてもなかなか送信することができないようです。現に私が実際に移動して144.64MHzを耳で聞きながら移動しましたが、なかなか送信できないまま、クルマはどんどん進んでしまう、といった印象を受けました。ただ、私達はアマチュアです。趣味だからこそ無駄や遠回りが許される、という考え方もあります。

オススメ設定値
 ツール→詳細情報設定 Packet → APRS Server の ビーコン間隔は 20分以上に設定
 ツール→詳細情報設定 自分局情報 → 送信間隔 も 20分以上に設定
■CHATに参加する場合

MSGタブをクリックすと、CHAT機能のウィンドウになります。上の(5)の5桁番号を入力していないと、「見るだけ」の動作となります。

CHAT文字は必ず半角英数字で入力します。かな漢字は使えても使わないのがルールですし、全世界に幅広く配信されますので、海外も含め、大勢の人が見ている事を意識した書き込みが必要です。



CHAT送信する時の各項目の設定例

※パスに WIDE と書いてありますが、書かないでください。


次→クルマから位置情報を発信してみよう。

【最新情報】JA6NKA局による AGWTrackerの紹介が CQ Ham Radio誌 2007年2月号(1/19発売)に掲載されています。UI-View32に関しては CQ出版社の単行本「デジタル&インターネット通信」に導入から設定まで詳しく書かれていますのでぜひ参考にされてください。
【おわび】CQ Ham Radio誌 2月号のソフトウェアの概要を記した特集記事(執筆者:JS1CYI)の記事の中でAGWTrackerをフリーフェアと紹介しておりますが、これは原稿編集中のミスです。「シェアウェア」が正解です。シェアウェアとは気に入ったり、これから使い続けたい、場合には作者に対してお金を払うタイプのソフトウェアを意味します。
【AGWTrackerの価格など】
AGWTrackerは$49です。Paypalでも支払いができますので、気に入ったら作者を応援する気持ちも込めて送金するのも良いと思います。送金すると、数日経過して登録番号が発行され、ウィンドウの左上に出る Unregistrated Version という文字が消えます。

(c)2007 by JS1CYI,JQ1YDA
| APRSトップへ || ホームへ戻る |