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サブバッテリー積載計画

最近は、カーオーディオマニアやクルマイジリフリークの間ではサブバッテリを積むのが流行っているらしい。アパマンハムの増加同様。アパマンでオーディオをガンガンやろうものなら、近所から苦情が来る。車内で心置きなくガンガンやろうという人たちが増えるのも時代の流れなのだろう。こんな背景から、サイトで検索すると思いのほか多くの人たちがサブバッテリ積載に情熱を燃やしていることが解る。電源系を強化しないと大きなアンプが稼動できないばかりでなく、「音」に影響が出るからに違いない。
 私はオーディオマニアではないが、クルマで無線(特にHF帯)を運用しようとなると、イグニッションノイズに悩まされる。特にウチのノア(AZR65G)の場合はイグニッションジェネレタからの高周波系のノイズの発生が尋常ではなくフィルタで対策できるレベルではないと悟った。ハッキリいってHFで運用する際はエンジンを切らなければならないのである。そこで、サブバッテリを積載しエンジンを切りつつも心置きなく無線ができるようサブバッテリ積載プロジェクトを計画した。




サブバッテリに使うバッテリは何にする?
理想はサイクルバッテリだが・・・

鉛蓄電池は空になるまで電流を流し続けたあと、放置しておくとイッパツでダメになってしまうといわれている。ところが、ニッカド電池などのように空に近づいたら充電して繰り返し使えるようにするタイプのものもあって、業務用の無停電電源や電動カートやフォークリフトなどで使われている。これをサイクルバッテリと呼び、クルマ用(エンジン始動用)のバッテリとは異なり、空っぽ近くになるまで使ってもダメージが少ないらしい。さらに自動車用バッテリの中でもキャンピングカーなどのサブバッテリとしての利用を意識したディープサイクルバッテリと呼ばれる製品もる。ところがこれらのサイクルバッテリは自動車のエンジン始動用のバッテリに比べてかなり高価だ。しかも、使用後は専用の充電器や比較的高い電圧で充電して満タンにしておかないとスグにヘタってしまうらしい。
 次に検討したのは、パソコンの無停電電源などに利用されている密閉型の鉛蓄電池、おなじみの秋月電子でも色々なシリーズが売られているが、どうしても容量の点で不安が残る。鉛蓄電池である以上、それなりの扱いが必要で、廃棄物になった際も問題だ。ただ、水素ガスが出ずらく扱いやすいのが最大のメリットなのだが。
 結論として、空で放置したらイッパツでヘタるのは鉛蓄電池である以上避けられない。容量の点も勘案し、イッソの事、安価なエンジン始動用バッテリでいいじゃんと考え、高価で扱いが難しいサイクル系バッテリなどの検討は早々にとりやめた。


電動カートなどで使われるサイクルバッテリの例


密閉型鉛蓄電池(パソコン用無停電電源用)

サブバッテリ充電システムの検討

クルマの発電機(オルタネータ)がエンジンの力で動作し発電を開始すると、メインバッテリに充電されるが、その電流をサブバッテリにも流して走行中にしっかりと充電するようなシクミが必要だ。しかし、バッテリを単純に並列つなぎにした場合、容量が増えるだけで、負荷に電流を流し続けるとエンジン始動用バッテリもアガってしまう。よって、充電電流だけをメインとサブの両方に流し、放電の際にはサブとメインを分離するしくみを構築しなければならない。



AZR65G ノアに積んでいるオルタネータ(120A)

アイソレーターの検討

サブとメインのバッテリを分離するために、アイソレーターという製品が売られているのだが、これがまた高いうえに良いウワサを聞かない。基本的には、エンジンが動いているかどうか電圧で判断する回路とダイオードでサブとメインを分離するという回路が入っているらしいのだが、それのどこがいげないのだろうか・・・。
 最近のクルマにおいては、充電電圧はレギュレタ回路で一定に保たれているそうで、その電圧は 14V位が一般的だそうだ。ダイオードによるアイソレータ回路を使用した場合、ダイオード通過による電圧降下で、充電電圧が13V前後まで下がる。満充電までに時間がかかってしまうことから。ちょい乗りがおおいクルマなどでは、慢性的な充電不足に悩む事になるらしい。結果、市販されているアイソレータの採用はやめ、アイソーターを自作することにした。結論として導き出した、アイソレーション回路は以下のとおりである。

自作アイソレーション回路



この回路を設計(といっても単純な回路だが)の目玉は、電流制限用のセメント抵抗。海外製の Automatic Power OFFユニット(詳しくはこちら)を利用し、エンジンがかかり発電が始まるまで(回路的には13.05V以上になるまで)、サブバッテリ側に電流を流さないようにする。ある程度エンジンを回した直後は、バッテリの電圧が13Vを超えている場合があるので、途中、ACC電圧でON/OFFするリレーを入れてエンジンキーの動作により回路を接続しないようにした。電流制限抵抗の有用性については、当サイトでおなじみの利根川さん(7M1RUL)から非常に解りやすい解説をしていただいたので以下に示す。
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電流制限抵抗は、サブバッテリを使い込んでサブバッテリの電圧が下がった状態で充電状態に入ったとき、大電流が流れるのを防ぎます。単純計算ですが充電電圧が14V、バッテリーが11Vだとすると電位差は3Vとして、抵抗が0.3Ωのとき10Aの電流が流れると抵抗による電圧降下は  V=IR、0.3Ω×10A=3V ですからこれ以上の電流は流れなくなります。
 抵抗が入ると十分に充電できないのでは?の懸念は無用。満充電近くで端子電圧が上がると電位差が小さくなり、電流も減っていきます。このときの電流を0.1Aとすると  0.3Ω×0.1A=0.03Vとなります(端子電圧は13.97V)
抵抗の放熱には十分注意してください。バッテリー11V時、10A流して充電中の0.3Ωの抵抗は P=V×I=I×I×R=3V×10A=10Aの2乗×0.3Ω=30W(結構爆熱)=1秒間に30Jの熱が発生します。
 電流制限抵抗は小さいバッテリーなら大きく、大きなバッテリーなら小さくします。放電終止電圧と最大の充電電流を眺めて決めて下さい。
 サブバッテリを使い切ってしまった直後は、エンジン起動前のメインバッテリーからいきなり10A食われる.....。なので、一般的な「バッテリーセパレータ回路」はメインバッテリーの端子電圧がある電圧にならないとサブを充電しない、エンジン回して端子電圧が復活するまで回路として接続しないわけです。


真ん中の黒いユニットがAPO3、一番右側が電流制限用抵抗(0.3Ω30W のセメント抵抗)
上記の回路を使った充電電圧と充電電流の関係
(安定化電源を利用して屋内でテスト)


充分に使い切った55B24Lバッテリ(端子電圧が約 10.5Vの状態)に充電し始めた直後の際の安定化電源の電圧と電流との関係。
安定化電源出力電圧 充電電流 .
16V 約8A .
14V 約5A .
13.8V 約5A .
12V 0A APO3によるカット
充電が進むにしたがい、0Aに近づいてゆく。最終的には0Aとなった。

←テスト環境。アンメータ・電圧計は Whatt's Up Meter を使用。セメント抵抗の温度を測っているのは秋月で売られている有名な温度計。セメント抵抗の温度は最高で40C゜位まで上がった。
 ちなみに、セメント抵抗はヤフオクで送料込みで2個\400で購入。最近は入手しずらい電子パーツもオークションで買えるようだ。



あとはバッテリの固定方法を検討したうえでクルマに積むだけである。特にサブ・バッテリがひっくり返り電解液(希硫酸)が漏れると、クルマの金属部分に致命的なダメージを与えるので、電気系統よりもバッテリの物理的な固定措置のほうが難題である。
 クルマにはすでにAnderson Powerpole コネクタを使ってリレー類がブロック化され配線済みであり、事実上、ポン付けできる状態にある。赤い四角いユニットが、DC電源系のタコアシ配線をプラグアンドプレイ化するスプリッタで、ここにサブバッテリの出力を接続するだけ。まるで電子ブロックを組むように様々なパーツ類を組み合わせて配線できるようになっている。

パソコンの無停電電源に応用する

これらサブバッテリの積載を経験すると、クルマのバッテリを流用したパソコン用「無停電電源」の構築にも応用できる事が解る。今回の回路におけるオルタネータ(メインバッテリ)の部分を13.8Vの安定化電源に置き換え、市販の12V->100Vインバータ(DC/ACアダプタ)を負荷側に接続すれば、簡素かつ実用的な「無停電電源」システムが構築できる。

サブバッテリに関する基礎知識。注意点。(協力:7M1RUL利根川さん)

Q1.サブバッテリの容量や種類は自動車に積んであるバッテリと同容量が良いと聞いたが本当?!
A1.恐らく充電能力の問題と、メイン・サブの特性を揃えておいた方が充放電時にメインとサブの電圧が不均等になり、メインからサブへ電流が流れたりその逆だったりということをなるべく少なくするためにそう勧められているものと思います。

Q2.ディープサイクルバッテリはイマイチって本当?
A2. うーん、値段の割にね〜、という感じは否めません。過放電すればてきめんに劣化します。環境とモノの取り扱いについて如何なものと思うものの、車用の2k〜3k円のバッテリー使いつぶす方が30k近くするやつ使うより安上がりという意見が多いようです。

Q3.充電の際、満タンに近いバッテリのほうから充電されてゆくって本当?
A3.解りません。定電圧型の充電だと少ない方に大きな電流が流れます。定電圧低電流型の充電器で単純並列で充電すると充電器の容量(電流)が足りないと満タンに近い方から少ない方へ電流が流れます。充電器に複数個並列にバッテリー繋いで充電するのは危険です。同じ特性、同じ使用条件と揃えても、経年変化で差違が生じます。並列に繋いだ中に弱ったバッテリーが有ったばあい、充電しない放置状態でも電流が流れ、他のバッテリを道連れにしますので要注意です。

Q4.サブとメインをつなぐケーブル耐圧は?!
A4.充電時に流れる電流を見て、それ以上の耐圧がある太い電線が良いです。ボンネットの中の環境を考えると耐熱性の高いモノにしてください。

Q5.面倒なのでACC電圧でON/OFFする30Aリレーを介してメインバッテリと単純分離でいいんじゃない?
A5.個人的にはあまりお勧めしません。分離された後、サブが使われて、端子電圧が下がっているときにメインにいきなり繋ぐことになるのでオススメできません。バッテリーの並列接続は、特性が揃ってないと厄介です。

Q6.普通の鉛蓄電池の 55B20L の 55の部分って 55Ahのこと? 時間率は?
A6.ここのサイトに詳しく載っています。http://gyb.gs-yuasa.com/support_car/knowledge/capacity.html

Q7.バッテリ充電中に「硫化水素」が出ると聞いたが危険?!
A7.硫化水素ではなく、バッテリ液の水分が電気分解されて酸素ガスと水素ガスが発生する方がとても危険です(笑)燃えるというレベルではなく、丁度混ざってますので室内に溜まっていれば、それはもう芸術的です。しかも、サブバッテリー充電時大きな電流を流すと、硫化鉛から酸化鉛の化学変化が追いつかなくなって電解液の水を電気分解.....。シールバッテリでは、触媒で発生した水素ガスを酸素ガスと反応させて水に戻し、熱を発生...バッテリーが発熱.....らしいです。(シールバッテリーの説明書に書いてあったような..)何にせよ最大充電電流を野放し(非制御)にするのは危険です。

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